ただのオペラでは物足りないと言わんばかりに (実際、多くの人には物足りないのだが) 、1820年代後半から1850年代にかけて「グランド・オペラ」がフランスで大流行した。グランド・オペラは4幕または5幕からなり、大勢のキャストとオーケストラ、豪華な衣装に舞台効果、歴史に題材をとったドラマティックな筋書きなどをその特徴としている。グランド・オペラの様式を確立した記念碑的作品は、ダニエル・オベールの『ポルティチの唖娘』である。この作品は、1647年にナポリで起きた反乱を題材に据え、噴火するヴェスヴィオ山とそこに身を投じるヒロインという場面で幕を閉じる。初演では、閉幕後、観客の誰もが感動の涙を流した。それから約60年にわたり、ヨーロッパの人々はグランド・オペラに詰めかけたのである。