倫理の萌芽もルールの発展もいまだ見られなかった太古の時代、戦争は基本的に総力戦であった。総力戦とは、国家がその持てる力を総動員し、敵国のすべて――軍隊は言うにおよばず、民間人、各種インフラ、工業資源、農業資源、戦争継続の意志に至るまで――を攻撃対象として遂行する戦争のことである。過去には、戦いの専門家たる軍人たちが、色鮮やかな制服をまとい、騎士道精神と名誉を重んじながら (少なくとも建前上は) 、限定的な戦争に興じた時代もあった。しかし、産業革命が、アメリカ南北戦争が、そして第一次世界大戦が、あらゆる手段を利用して敵を滅ぼすという戦争形態を、再び歴史の表舞台に登場させることになったのである。その究極が第二次世界大戦であり、これを上回る規模の総力戦を人類は経験していない――少なくとも、今はまだ。